主要都市圏のマンション修繕積立金が過去最高に、借入依存で所有者の負担増
- Tsubasa Yajima

- 9月23日
- 読了時間: 3分
マンションの毎月の修繕積立金の高騰が、日本全国の所有者に大きな負担を与えています。2024年には主要都市圏の新築物件で積立金が過去最高を記録し、既存物件では修繕不足を補うために借入に頼るケースが増え、未返済債務も過去最高水準に達しています。 この財政的な負担は所有者にとどまらず、周辺地域への影響も懸念されています。
新築マンションの積立金は過去最高
不動産調査会社の東京カンテイによると、新築マンション販売時に設定される月額積立金(初期一括金を含む)は、2024年に総床面積5,000㎡未満、20階建て以下の最も一般的な物件タイプで過去最高となりました。首都圏・大阪圏ともに、10年前と比べて約50%高くなっています。

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建設コストの高騰、特に人手不足の影響で、デベロッパーは高めの積立金設定を余儀なくされています。それでも2024年の水準は、国土交通省の指針平均を下回っています。 「マンション価格はすでに高騰しており、積立金が過剰に上昇すると需要が冷え込む可能性があるため、値上げは相対的に抑えられています」と、東京カンテイの高橋正之主任研究員は指摘します。
一方、首都圏の大規模物件(総床面積10,000㎡以上)は、指針平均を超えることが多く、富裕層向けの高級物件で高額積立金が受け入れられやすい傾向が見られます。
既存物件は借入に依存
積立金が不足すると、管理組合は必要な修繕費を借入でまかなう必要があります。
住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」は、2024年度に257億円に達し、2011年の制度開始以来最高額となりました。10年前の3倍にあたります。
借入は2年連続で前年同期比30%超の伸びを示し、外壁修繕や給排水設備の交換などのプロジェクトに活用されています。
「修繕を先延ばしにすると、外壁の落下などで近隣に影響するリスクがあります。借入になっても最低限の修繕は行わなければなりません」と、さくら事務所に所属するマンション管理コンサルタントの土屋輝之氏は警鐘を鳴らします。借入には返済のための積立金増額も不可避です。
借入依存の深まりと修繕が滞るリスク
一部の物件では、繰り返し借入を行うケースもあります。日経新聞によると、築30年以上の東京のマンション所有者は「すでに1件のローンを返済中で、次の修繕でも再び借入が必要になる」と述べています。
突発的な漏水による緊急修繕で、積立金は従前の数倍に引き上げられました。それでも借入返済が続くため、次回15年後の大規模修繕のための蓄えは十分でなく、さらなる借入が見込まれます。
現在、1~10年の固定金利ローンは約1%で、一部自治体では利子補助があり負担は比較的軽くなっています。しかし2024年以降、日本銀行が利上げに転じていることから、借入コストの上昇リスクが迫っています。金利上昇により、借入が困難になれば、必要な修繕が滞る恐れがあります。
入札談合の懸念が圧力に
日経新聞によると、修繕費は反競争的な慣行で水増しされている可能性もあります。3月以降、公正取引委員会はマンション修繕工事の入札談合疑惑で複数企業を立ち入り調査しています。
不当なマージンが上乗せされると、すでに高騰する建設費はさらに膨らみ、適切に管理された積立金でも不足する可能性があります。
管理監督強化の必要性
政府はマンション再開発の意思決定条件の緩和など、段階的に施行される法改正を行っています。しかし専門家は、法律だけでは問題解決にならないと警告します。
「当局は修繕費の公正なベンチマークを算出・公表し、談合を見抜きやすくするべきです。また、借入すらできない管理組合への支援策について議論する時期に来ています」と土屋氏は述べています。



