日本政府、不動産の相続税評価を「購入価格ベース」へ見直し提案

日本の税当局は、賃貸不動産や不動産小口化商品について、相続税・贈与税の評価方法を見直す検討を進めています。
現行の評価ルールでは、不動産の市場価格と税務上の評価額に大きな乖離が生じるケースがあることが背景にあります。
2025年11月13日に開催された政府の税制調査会で、国税庁(NTA)は、賃貸不動産や不動産小口化商品について、直近の購入価格の一部に過ぎない水準で税務上の評価額が算定された事例を示しました。

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2025年11月28日時点では、新たな評価方法は決定されておらず、関係者は複数の方法を引き続き検討しているとしています。
なぜ税務上の評価額が大幅に低くなるのか
日本の相続税では、原則として財産を時価で評価することとされています。
一方、不動産については、すべての物件について正確な市場価格を算定することが難しいため、国税庁が定める評価ルールが一般的に使用されています。
都市部の土地の多くは、国税庁が公表する路線価をもとに評価されます。また、賃貸不動産については、借家人の権利によって所有者の自由な利用が制限されることから、一定の評価減が適用される場合があります。
その結果、投資市場における価格とは異なる評価額となる可能性があります。
入居率の高い賃貸物件は、買い手が賃料収入を評価することで高い市場価格が付く場合があります。しかし税務上は、入居者がいることで所有者の利用が制限されるため、評価額が低くなる可能性があります。
このため、市場価格と相続税評価額の間に大きな乖離が生じることがあります。
国税当局が示した事例
国税庁は、東京都千代田区の賃貸マンションについて事例を示しました。
この物件は2019年8月に21億円で購入されました。2022年5月に相続が開始された際、通常の税務上のルールに基づく評価額は4億2,000万円でした。
また、国税庁は2022年3月に3,000万円で購入された不動産小口化商品の事例も取り上げました。
約5カ月後に贈与された際、その税務上の評価額はわずか480万円と算定されました。その持分は後に、購入価格とほぼ同額で買い戻されています。
これらの事例は、直近の市場取引によって標準的な税務上の評価額を大きく上回る価格が示されている場合に、現在の評価方法が適切かどうかを当局が検討している理由を示しています。
不動産小口化商品も見直しの対象に
不動産小口化商品では、投資家が建物全体を購入するのではなく、収益を生む不動産の持分を小口で保有することができます。
国税庁は、こうした持分が投資商品として、算定された税務上の評価額を大きく上回る価格で売買できる場合、既存の不動産評価方法が適切なのかを検討しています。
関係者によると、この問題は特定の法的スキームだけに限られるものではありません。
日本ではすでにマンションの評価方法を厳格化
今回の見直しは、区分所有マンションを対象とした過去の制度変更に続くものです。
2024年1月1日以降、相続または贈与された一定の区分所有マンションについて、新たな国税庁の評価ルールが適用されています。このルールは、従来の税務上の評価額と市場価格との間に生じる大きな乖離を抑えることを目的として導入されました。
ただし、これらの措置は一棟の賃貸不動産に対する直接的な解決策にはなっていません。
政府関係者は、一棟の賃貸不動産については物件ごとの特性が大きく異なるうえ、直接比較できる取引事例も少ないため、評価方法の標準化がより難しいと説明しています。
今後何が変わる可能性があるのか
2025年11月28日時点で、政府は新たな評価方法を決定していません。
関係者は、直近の取引価格をより重視する方法や、投資収益を考慮する方法など、複数のアプローチについて議論しています。
最近購入された賃貸不動産については、その取引価格に賃料収入や期待利回りなどの要素がすでに反映されているため、市場価格を判断するうえで有用な参考指標となる可能性があります。
ただし、11月の議論はあくまで政策見直しの一環であり、法改正などによって実施された制度変更ではありません。
なぜこれが重要なのか
海外の不動産オーナーや投資家にとって、この問題が重要なのは、日本の不動産では投資市場における価格と相続税評価額との間に大きな差が生じる可能性があるためです。
この差は、一部の資産承継・相続対策において賃貸不動産が魅力的な選択肢となってきた背景の一つでもあります。
今回の政府による見直しは、物件や投資商品が直近の取引で大幅に高い価格で売買されている場合でも、現在の評価方法を適用し続けることが適切なのか、当局が問題意識を持っていることを示しています。
今後、制度が変更されれば、日本の賃貸不動産を活用した相続・資産承継の税務上の前提が変わる可能性があります。
ただし現時点では、既存の評価ルールが引き続き適用されています。
出典/Further Reading:
Patience Realty(2025年11月)


