国交省が日本の不動産取引でマネーロンダリング対策の指針を示す|仲介会社による取引の透明性確保が重要に

日本の不動産規制当局は、不動産仲介会社に適用される既存の疑わしい取引の届出ルールについて、その適用方法をより明確にしました。
2026年9月3日に国土交通省(MLIT)が示した指針では、不動産仲介会社が疑わしい取引の届出(STR:Suspicious Transaction Report)を行うべきケースが明確化されました。これには、予定されていた不動産取引が正式な契約に至らなかったケースも含まれます。
また、STRは規制当局への報告制度であり、不正行為があったとの認定を意味するものではないことも確認されています。STRを提出したからといって、仲介会社が自動的に取引を拒否したり、取引を中止したりする必要があるわけでもありません。
その根拠となる法的義務は、すでに「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に定められています。
したがって、9月3日の動きは新たな届出制度を導入するものではなく、既存の枠組みを実務上どのように適用すべきかを明確化したものといえます。
今回の明確化が意味すること
日本の不動産仲介会社にはすでに、顧客の本人確認を行い、一定の取引記録を保存し、疑わしい取引の基準に該当する取引を届け出ることが求められています。
今回の国土交通省による明確化では、不動産売買において業界で使用されている既存の「疑わしい取引」のチェックリストを、仲介会社がどのように適用すべきかに焦点が当てられています。

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今回明確化された方針では、該当するチェック項目が1つでも確認された場合、STRを提出することになります。また、チェック項目に該当するかどうか判断できず、その不確実性を解消できない場合も、仲介会社は届出を行うよう求められています。
現在のチェックリストには、例えば以下のような項目があります:
購入者が多額の現金で不動産を購入しようとしており、特にその購入が顧客の収入や資産状況と整合しないように見える場合
偽名や他人の身分を使用している疑いがある場合
取引によって最終的に利益を得る者について、説明や資料の提出を拒否した場合
明らかな経済的合理性がないにもかかわらず、短期間に不動産の購入や売却を繰り返している場合
明確な理由がないまま、市場価格を大幅に下回る価格で不動産を急いで売却しようとしている場合
決済予定日の延期について合理的な説明がない場合
これらはあくまで注意すべき兆候であり、不正行為の証拠ではありません。
仲介会社は、顧客の本人確認の結果、取引の内容、その他把握している情報などをもとに、一見して通常とは異なる状況について合理的な説明があるかどうかをまず判断します。
国土交通省は、2026年10月頃をめどに改訂版のチェックリストも準備しています。9月時点では、これらの改訂内容はまだ施行されていません。
現在検討されている案には、通常とは異なる支払方法、説明のつかない第三者による支払い、暗号資産が関係する一部の取引、資金の最終的な所有者や支配者を特定することが難しいケースなどが含まれています。
また、マネーロンダリング対策やテロ資金供与対策の観点から高リスクとみなされる法域に関連する取引についても、案では取り上げられています。
契約締結前でも届出の対象になり得る
今回の明確化が重要なのは、購入者や売主が、正当な取引を行っているにもかかわらず、契約締結前や資金移動前の段階で、1つ以上のチェック項目に該当する可能性があるためです。
通常とは異なる支払方法、第三者の関与、取引スキームの説明のつかない変更などがあった場合、たとえ正当な理由があったとしても、仲介会社はSTRを提出する必要があるかどうかを判断することがあります。
顧客確認、交渉、取引準備の過程で確認された疑わしい状況は、その後に取引が中止された場合でも、届出制度の対象となる可能性があります。
ただし、これは通常の不動産に関する問い合わせや、成立しなかった交渉が自動的に報告されるという意味ではありません。
重要なのは、予定されている取引の過程で確認された状況が、関連する届出基準に該当するかどうか、そして仲介会社がその状況について合理的な説明を得るのに十分な情報を持っているかどうかです。
また、STRの提出と、取引を進めるかどうかの判断は別のものです。
仲介会社は、規制上の届出義務を負いながら、別途、取引を継続することに問題がないかを判断することができます。銀行やその他の金融機関も独自にコンプライアンス上の判断を行い、その後に政府が取る措置についても別途判断されます。
買主・売主が準備しておくべきこと
日本の不動産取引に参加する居住者・非居住者にとって、今回の明確化によって、仲介会社によるコンプライアンス確認がより目に見える形で行われるようになる可能性があります。
取引の各要素について合理的な説明があるかどうかについて、まず仲介会社が判断するためです。
取引内容やリスクの程度によっては、仲介会社から以下のような事項について、より詳しい説明を求められることがあります。
本人確認情報、および法人の場合は実質的支配者(beneficial owner)
不動産を購入・売却する目的
購入資金の出所
実際に支払いを行う者
資金の送金方法
買主、支払者、最終的な所有者の関係
すべての購入者に同じ資料の提出が求められるわけではありません。必要な資料は、取引の内容、関係当事者、仲介会社によるリスク評価などによって異なります
取引に通常とは異なる要素がある場合、買主・売主は仲介会社に対して率直に説明し、必要に応じて裏付けとなる情報を提供することが重要です。
第三者による支払い、複雑な所有構造、支払方法の変更、決済の延期などには、もちろん正当な理由がある場合もあります。しかし、仲介会社がその説明の妥当性を判断できるのは、顧客から共有された情報に基づいてのみです。
不動産仲介会社は、日本の「犯罪による収益の移転防止に関する法律」の対象となる事業者の一つです。同法第8条第4項では、仲介会社がSTRを提出する予定であること、またはSTRを提出したことを、対象となる顧客や関係者に伝えることが禁止されています。
詳細については、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」第8条を参照してください。
買主・売主にとっての主なポイントは、日本が不動産取引におけるコンプライアンスの枠組みをより明確にしていることです。
取引に誰が関与しているのか、資金がどのように移動するのか、また通常とは異なる要素がある場合にはその理由を説明できるよう準備しておくことで、仲介会社が取引全体を踏まえて適切に判断することを助けられます。
出典/Further Reading:
Patience Realty(2026年9月)



