リースバック取引に新ガイドライン|国交省が高齢者などの消費者保護に向け策定
- Tsubasa Yajima

- 7月30日
- 読了時間: 6分
国土交通省は、住宅所有者が自宅を売却した後も賃借人として住み続ける「リースバック」取引について、既存の不動産関連法がどのように適用されるかを明確にする新たなガイドラインを策定しました。

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ガイドラインは2026年10月1日に施行されます。賃貸借契約の条件が不明確であること、高額な賃料や解約費用、高齢者を中心とした住宅所有者への強引な勧誘などに関する相談が寄せられていることを踏まえ、取引時の説明や勧誘に関するルールを明確化するものです。
住宅のリースバック取引とは?
リースバック取引では、住宅所有者が自宅を企業や投資家に売却した後、その住宅を賃借して住み続けます。
この仕組みにより、住宅に固定されている資産を現金化しながら、すぐに転居せず住み続けることが可能になります。退職後の生活資金、債務返済、転居前の一時的な住居確保などを目的として利用される場合があります。
ただし、住宅の所有権は買主に移転します。元の所有者は賃借人となり、その住宅に住み続けるためには賃料を支払う必要があります。
これは、住宅所有者が一般的に所有権を維持したまま、住宅の資産価値を担保として借り入れを行うリバースモーゲージとは異なります。
なぜ日本はルールを明確化するのか
リースバック取引では、自宅の売買契約と、売主がその後も住み続けるための賃貸借契約という、密接に関連する2つの契約が組み合わされます。
そのため、取引全体がもたらす金銭面や住居面での影響を把握することが難しくなる可能性があります。住宅所有者は売却によって受け取る現金に注目する一方、その後に発生する賃料、契約期間、更新条件、修繕責任、違約金などを十分に理解しないまま契約するケースも考えられます。
日本の消費者行政当局によると、住宅のリースバック取引に関する相談件数は2023年度と2024年度のそれぞれで200件を超えました。契約当事者のおよそ70%が70歳以上でした。
報告された問題には、契約期間が限定されているにもかかわらず「いつまでも住み続けられる」と説明されたケース、契約後に高額な解約費用が発生することが判明したケース、勧誘を断った後も繰り返し営業を受けたケースなどがあります。
不動産会社に求められる説明義務
今回のガイドラインは、リースバック取引を対象とした新たな法律を制定するものではありません。宅地建物取引業者が住宅を買い取る場合や売買を仲介する場合に、既存の宅地建物取引業法の規定がどのように適用されるかを明確にするものです。
不動産会社には、誠実に業務を行い、既存の不適切な行為に関する規制を遵守することが求められます。
住宅所有者に勧誘を行う際には、その意思決定に重大な影響を及ぼす可能性のある情報を意図的に伝えないことは禁止されています。リースバック取引では、住宅の売買だけでなく、それに付随する賃貸借契約の重要な条件も含まれます。
賃貸借契約に関する主な情報には、以下のようなものがあります。
賃料と支払いスケジュール
賃貸借期間と更新条件
解約条件と違約金
修繕責任
追加費用や保証金
住宅の使用に関する制限
住宅が将来別の所有者に売却された場合に想定される影響
また、重要事項の不開示が意図的でなかった場合でも、誠実に業務を行う義務に違反する可能性があるとガイドラインでは示されています。
法的義務と推奨される対応
国土交通省が示すすべての対応が、独立した法的義務となるわけではない点も重要です。
ガイドラインでは、可能な限り、提示する売却価格と賃料がどのように算定されたのかを説明することが望ましいとしています。また、住宅所有者が売却による受取額と、契約期間中に支払う賃料総額との関係を理解できるよう支援することも求めています。
開示すべき情報を一覧にした書面を提供することも望ましい対応とされています。
これらの推奨事項は、住宅所有者が十分な情報に基づいて意思決定できるようにすることを目的としています。ただし、重要な事実の隠蔽や不適切な勧誘に対する法的な禁止規定とは区別する必要があります。
なぜ総額で考える必要があるのか
例えば、住宅所有者が3,000万円で自宅を売却し、その後10年間、月額20万円の賃料を支払って住み続けるケースを考えてみます。
10年間に支払う賃料の総額は、更新料、修繕費、その他の費用を除いて2,400万円になります。
だからといって、この取引が適切ではないというわけではありません。住宅所有者はまとまった資金を先に受け取ることができ、一定期間その住宅に住み続けられることに価値を感じる場合もあります。
しかし、この例は、売却価格だけを見て取引を判断すべきではない理由を示しています。住宅所有者は、売却によって得た資金のうち最終的にどれだけが賃料に充てられる可能性があるのか、どの程度の期間住み続けられるのか、将来的に経済状況や住居に対するニーズが変化した場合にどうなるのかについても確認する必要があります。
複数の会社から提示を受けて比較することも、提示された売却価格や賃貸借条件が妥当かどうかを判断するうえで役立つ可能性があります。
賃貸借契約の種類が住み続けられる期間を左右する
不動産賃貸に関連するもので、日本特有の商習慣として特に重要なのが普通借家契約と定期借家契約の違いです。
普通借家契約では、一般的に借主はより強い更新の権利を持ちます。一方、定期借家契約は、契約期間が満了すると、当事者間で新たな契約を締結しない限り終了します。
そのため、「この住宅に住み続けられる」と説明された場合には、それが一定期間に限られるのか、それともより長期的に住み続けられる可能性があるのかを確認する必要があります。
日本の公的機関が公表している消費者向けの注意喚起では、特に定期借家契約の場合、リースバックを利用した人が想定していた期間まで住み続けられない可能性があるとしています。
行政処分と相談情報の共有
今回のガイドラインでは、禁止されている行為を行った場合、宅地建物取引業法に基づく行政処分の対象となる可能性があることも明記されています。
違反の内容によっては、行政からの指示や業務停止処分、不動産業の免許取消しなどが行われる可能性があります。また、一部の違反については同法に基づく刑事罰の対象となる場合もあります。
国土交通省はさらに、全国の消費生活相談情報を蓄積する「PIO-NET」を活用し、不動産業者の免許を所管する国や都道府県の当局と相談情報を共有する予定です。共有される情報には、個別の企業を特定できる内容が含まれる場合があります。
ガイドラインの内容を分かりやすく説明する消費者向けの資料も公表される予定です。
今回のガイドラインが意味すること
今回のガイドラインはリースバック取引そのものを禁止するものではなく、適切な状況では今後も有効な選択肢となり得ます。
重要なのは、自宅の売却と、その後の賃貸借を一体となった意思決定として捉えることです。売却時にまとまった資金を受け取れることだけでは、その取引が経済的に持続可能か、また売主が安心して住み続けられるかを判断することはできません。
不動産会社にとっては、関連する賃貸借契約について十分な説明を行わずに売却を勧めた場合や、住宅所有者に不適切な圧力をかけた場合、行政処分を受けるリスクが高まります。
住宅所有者やその家族にとっては、契約を締結する前に、売却価格、想定される賃料総額、賃貸借契約の種類、更新の権利、修繕義務、契約終了時に発生する費用などを比較・確認することが重要です。
出典/Further Reading:
Patience Realty(2026年7月)



