建築費高騰で再開発計画に遅れ広がる|地方で相次ぎ、帝国ホテルや品川大型開発にも波及
- Tsubasa Yajima

- 5月15日
- 読了時間: 4分
建築費の高騰を背景に、日本各地の再開発計画で延期・縮小・中止の動きが広がっています。これまで地方都市を中心に広がっていた「様子見」の流れは、現在では東京中心部の大型再開発にも波及しており、グランドプリンスホテル新高輪や帝国ホテル東京の再開発計画にも影響が及び始めています。
中東情勢の悪化に伴う資源価格上昇も重なり、今後さらに建築コストが上昇する可能性が指摘されています。
地方都市で先行して進む再開発見直し
再開発計画の延期や中止は、まず地方都市で顕在化しました。
2025年末には、名古屋鉄道が名鉄名古屋駅の再開発計画を中止。JR九州も、博多駅上空の複合開発計画を取りやめています。
岐阜市では、JR岐阜駅前の再開発事業でも見直しが進行中です。駅前再開発では2棟の建設を予定していましたが、事業組合によると、設計を担当していたゼネコンが建築資材や人件費の高騰を理由に2025年3月に撤退しました。
東街区では新たな施工会社が決定した一方、西街区では1年以上経過した現在も後任企業の選定が続いています。
また、同事業では2025年2月時点で、建築費上昇を理由に当初計画より建物高さを引き下げることも発表されています。
背景にある最大の要因は建築コストの急上昇です。ロシアによるウクライナ侵攻以降、鉄鋼など建築資材価格が大幅に上昇したほか、人手不足や建設業界の「2024年問題」に伴う残業規制強化も人件費上昇につながっています。
JR九州は、博多駅計画中止の理由として、当初4,350億円だった建設費見込みがほぼ倍増したことを挙げています。
地方都市では東京と比べ賃料水準が低いため、建築費上昇分を回収しづらい構造があります。そのため、採算維持のために計画規模を縮小するケースも増えています。
JR北海道も、札幌駅直結再開発でビル高さを引き下げるほか、着工・完成時期を延期する方向で調整しているとみられています。
建築費高騰の波が東京中心部へ
こうした再開発見直しの流れは、現在では東京中心部にも広がっています。
港区のグランドプリンスホテル新高輪や、千代田区の帝国ホテル東京でも、計画スケジュールの見直しが進んでいます。
西武ホールディングスの原田武夫常務は、JR品川駅から徒歩約5分に位置するグランドプリンスホテル新高輪再開発について、「慎重にスケジュールを精査している」とコメントしました。
同計画では、ホテル・オフィスなどを含む複合施設を建設予定で、当初は2028年度着工を予定していました。2026年度中にホテル営業を終了し解体工事に入る計画でしたが、当面は営業継続を決定しています。
再開発計画自体は維持されているものの、スケジュールや事業内容の再検討は避けられない状況となっています。
帝国ホテル東京の再開発でも、建築費高騰の影響が表面化しています。
3月末には、タワー館の解体工事開始時期が当初計画より約6年遅れとなる2030年度末頃へ変更されることが明らかになりました。

タワー館の解体工事開始時期が2030年度末頃へ変更されることが明らかになり、本館の建て替えスケジュールも未定となった帝国ホテルの外観写真(公式サイトより)
また、2031年度〜2036年度を予定していた本館建て替えスケジュールについても、現時点で未定となっています。
帝国ホテルは三井不動産などと連携し、内幸町エリア一帯の大規模再開発を進める方針でしたが、計画通り実現できるか不透明感が高まりつつあります。
建築費上昇が再開発市場の構造を変える
米国・イスラエル・イランを巡る軍事緊張を背景に、中東情勢はさらに不安定化しており、資源価格の上昇圧力が強まっています。
特に石油由来建材を中心に価格上昇が避けられない状況となっており、一部断熱材では需給逼迫も発生しています。
現在進行中の再開発案件に共通しているのは、建築費高騰が一時的な問題ではなく、再開発そのものの規模・時期・採算性を左右する構造問題へ変化している点です。
賃料や販売価格のさらなる上昇、あるいは建築費の沈静化が見られない限り、今後も延期・縮小・中止に追い込まれる再開発案件が増える可能性があります。
出典:
日本経済新聞(全文の閲覧には課金が必要です)



