美しいランドスケープを支える循環の物語|つくば牡丹園土職人37年の実践

更新日:9月15日
茨城県つくば市にあるPeony Garden Tokyo in Tsukuba(つくば牡丹園)は、約800種類、6万株の牡丹・シャクヤクが植えられた世界最大級の牡丹・シャクヤク園です。
しかし、この場所の興味深さは花だけではありません。
園長であり「土職人」を名乗る関浩一氏は、37年にわたり土と向き合い、植物と景観を育ててきました。その知見は現在、堆肥づくりや農業、食へと広がっています。

庭園や別荘、リゾートなど、土地そのものを長く楽しむ不動産では、屋外空間は単に眺めるためのものとは限りません。
土を育て、植物を育て、時にはそこで育ったものを食べる。つくば牡丹園の実践からは、土地と暮らしをつなぐ一つの考え方が見えてきます。
牡丹から始まった土づくりと土壌研究の実践
関氏が土に目を向けるきっかけになったのは、牡丹園の庭づくりを行なっていく中でのことでした。
同じ場所で牡丹を育て続けるうちに生育が悪くなる連作障害を経験し、植物だけではなく、その根が張る土壌について学び始めます。
1991年頃から堆肥づくりや土壌改良に取り組み、その後も毎年の結果を見ながら方法を修正してきました。現在のつくば牡丹園は、そうした長年の積み重ねの上に成り立っています。
余剰廃棄物だったサラブレッド馬ふんが高品質な堆肥の資源に
その土づくりの知見から生まれた取り組みの一つが、馬ふんをベースとした発酵堆肥「サラブレッドみほ」です。

土から暮らしへつながる循環ーサラブレッドのふんから良質な肥料を作る「サラブレッド堆肥エコシステムプロジェクト」開発当時の概念図/図版提供:株式会社リーフ・つくば牡丹園
関氏がサラブレッド由来の堆肥に取り組み始めたのは2015年から2016年頃。
きっかけは、美浦トレーニングセンターで発生する大量の馬ふんの処理問題と、その影響で霞ヶ浦の水質汚染につながる等の課題があり、何か別の形で活用できないかという相談でした。
厩舎から出る馬ふんには、麦わらや稲わら、ウッドチップなども含まれます。それらを発酵・堆肥化し、植物を育てる土へ戻す。一方では余剰物だったものが、次の植物を育てる資源へと変わります。
土から食卓へ
つくば牡丹園での土づくりの中で培われた土壌研究は、牡丹やシャクヤクだけに使われているわけではありません。
関園長が土づくりを実践する中、土壌改良の技術指導を行なった品目は、トマト、スイカ、イチゴ、メロン、キュウリ、トウモロコシ、米、玉ねぎ、サツマイモ、ジャガイモなど多岐に渡り、さまざまな農作物にもその考え方を応用しています。
また、つくば牡丹園では園内や提携の圃場で育てたシャクヤクの茎や葉を乾燥させたオリジナルのPeony Teaも商品化し、販売しています。
ここで見えてくるのは、「庭」と「食」を別々に考えない暮らし方です。

土壌研究の実践の場として、関園長の手掛ける土づくりは園内の牡丹やシャクヤクだけではなく、様々な作物の栽培や技術指導にも活かされている/写真提供:株式会社リーフ・つくば牡丹園
別荘やリゾート住宅、広い敷地を持つ邸宅でも、庭にハーブや野菜、果樹などを取り入れれば、屋外空間は景観であると同時に暮らしの一部になります。
自分が過ごす土地で育ったものを、自分たちの食卓で楽しむ。Farm to Tableという考え方は、農場やレストランだけのものではありません。
土地を育てることは、暮らしを育てること
不動産を見るとき、私たちは建物、立地、眺望、面積などに目を向けます。
しかし土地を長く所有するのであれば、そこでどのような時間を過ごし、どのような環境を育てていくかも、その土地の魅力の一部です。
土から植物へ。植物から景観や食へ。そして暮らしへ。
つくば牡丹園で37年間続けられてきた実践は、土地を「維持する」だけではなく、時間をかけて育てていくという考え方を教えてくれます。

関 浩一:土職人/Peony Garden Tokyo in Tsukuba(つくば牡丹園)園長
1960年生まれ。牡丹「芳紀」との出会いをきっかけに植物栽培に深く関わり、1989年のつくば牡丹園開園後、土壌微生物と有機物に着目した土づくりを追究。30年以上にわたる土壌改良の経験をもとに、馬ふんベースの発酵堆肥「サラブレッドみほ」の開発にも携わる。2022年3月、東京農工大学大学院博士課程(農学)を修了。現在も土づくりの指導や技術開発に取り組んでいる。



