日本の建設費高騰で既存住宅に再び注目|リノベーションと中古住宅流通の重要性高まる

高い建設費を背景に、日本では既存住宅をより有効に活用する必要性が高まっています。
業界団体は、リノベーションや省エネルギー改修への支援拡充に加え、健全な状態にある中古住宅をより長く活用できるよう、既存住宅の流通市場を強化することを求めています。
建設資材や人手の不足が比較的抑えられている状況でも、この議論の重要性は増しています。
日本の建設費は依然として高い水準にあります。建物の建設費の変化を追う国土交通省の建設工事費デフレーターによると、2026年3月の建築費指数は135.0となり、前年同月から6.4ポイント上昇しました。
より最近の調査を見ると、こうしたコスト圧力は新たな供給ショックによって引き起こされているわけではありません。

7月の全国8職種における建設技能労働者の需給状況は1.2%の不足率で、6月の1.0%から上昇したものの、前年同月の1.6%を下回りました。国土交通省は9月・10月の労働者確保の見通しについて「普通」としています。
これらの数字は、人手不足が急速に悪化していることを示しているわけではありません。一方で、建設労働者が大幅に余っていることを示しているわけでもありません。
資材についても同様の状況です。
国土交通省が8月に実施した調査では、対象となった13品目すべてで需給が均衡し、在庫も「普通」とされました。H形鋼の価格はやや上昇傾向とされた一方、その他の調査対象資材の価格は前月から変化していません。
これらの調査から、7月や8月に建設費全体が上昇したことが示されているわけではありません。しかし、資材の需給がより正常な状態に戻っても、建設費が大幅に低下するまでには至っていないことが分かります。
そのため、日本の既存住宅ストックの経済的な重要性が高まっています。
なぜ既存住宅が重要なのか
日本はこれまで、欧米の主要市場と比べて新築住宅への依存度が大幅に高い状況にありました。
国土交通省が2018年のデータをもとに行った比較では、既存住宅が住宅取引全体に占める割合は約14.5%にとどまり、欧米の主要市場の約5分の1から6分の1程度でした。
また、築年数の古い戸建住宅の評価方法にも、日本特有の慣行が存在してきました。
国土交通省は以前から、木造戸建住宅について、実際の状態にかかわらず、築20~25年程度を経過すると建物価値がほぼゼロと評価される市場慣行を指摘してきました。政府は、維持管理やリノベーション、建物性能が住宅価格により適切に反映されるよう、評価方法の改善を進めています。
建て替え費用が高くなるほど、この違いは重要になります。
構造上問題のない既存住宅をリノベーションすることは、解体して建て替える代わりの選択肢となります。特に、土地や周辺インフラにすでに価値がある地域では、その意味が大きくなります。
購入者にとって、リノベーション済みの既存住宅は、新築住宅の価格が高騰したエリアに入るための別の選択肢となります。所有者にとっては、住宅を全面的に建て替えることなく、改修によって住まいの利用可能期間を延ばすことができます。
ただし、すべての古い住宅を保存すべきという意味ではありません。
省エネ性能が低い、構造上の問題がある、あるいは立地条件が悪いなど、大規模な投資を正当化できない物件もあります。より重要なのは、今後も利用可能な住宅を見極め、改修し、適切に評価したうえで、より円滑に流通させられるかという点です。
住宅ストックの質向上を求める業界
こうした方向性は、住宅業界の政策提言にも徐々に表れています。
プレハブ建築協会は7月、国土交通省に2027年度の住宅関連予算・税制要望を提出しました。同協会は、世代を超えて利用・流通できる良質な住宅ストックの形成と流通を支援するよう求めています。
具体的には、住宅価格や建設資材価格の上昇を踏まえた補助上限額の引き上げに加え、省エネ住宅、リノベーション、住宅ストックの流通を対象とする制度への継続的な支援を要望しました。また、ZEHやGX関連住宅など、より高い環境性能を備えた住宅基準の普及を加速させることも求めています。
これらは業界団体からの要望であり、政府が決定した政策ではありません。
しかし、その方向性は一つの団体に限られるものではありません。住宅生産団体連合会も、既存住宅の流通、住宅ストックの質の向上、住宅価値の維持を政策課題として取り上げており、2027年度に向けて住宅ストック委員会でも提言の検討を進めています。
こうした転換を進めるには、購入者が何を購入するのかについて、より高い信頼を持てることが必要です。
実際には、建物の状態、維持管理履歴、リノベーションの内容などをより分かりやすくし、価格に適切に反映できるようにすることが重要になります。省エネ性能の向上や建物の品質をより信頼性の高い形で評価する仕組みも、新築住宅と既存住宅の間にある情報格差の縮小につながる可能性があります。
デベロッパーやその他の市場参加者にとっては、中古住宅市場の流通が活発になれば、物件取得、リノベーション、再販を組み合わせた事業機会が広がる可能性があります。ただし、その採算性は立地や建物の状態、改修費用などによって大きく異なります。
日本の最新の建設関連データからは、新たなコストショックが発生していることは確認されません。
一方で、資材の需給が均衡し、人手不足が比較的抑えられている状況でも、建設費が高止まりする可能性があることを示しています。
これは、質の高い既存住宅を単なる「古い建物」としてではなく、維持・改修し、適切に評価したうえで、より有効に流通させることのできる住宅ストックとして捉える必要性を強めています。
出典/Further Reading:
Patience Realty(2026年8月)



