日本の家計金融資産が所得を上回るペースで増加|住宅価格高騰で広がる購入力の格差

日本の家計が保有する金融資産は、2019年から2024年にかけて年間所得の3倍以上のペースで増加しました。この動きは、給与の伸びを上回る住宅価格の上昇が続くなかでも、一部の購入者が住宅市場に参加し続けられる背景の一つを示しています。
総務省統計局が2026年8月28日に公表した「2024年全国消費実態調査」によると、2024年の1世帯当たり平均年間収入は593万7,000円となり、2019年から6.3%増加しました。

一方、平均金融資産は19.3%増の1,527万2,000円となりました。
住宅市場において、この差は重要です。所得は住宅購入力を決める要素の一つにすぎません。
住宅ローンの借入可能額や毎月の返済額は所得に大きく左右されますが、購入者は蓄積した金融資産や借入能力、すでに住宅を所有している場合は既存住宅の資産価値も活用できます。
今回の調査は、こうした資産や購入力の分布がますます不均一になっていることも示しています。
平均的な資産額は「一般的な世帯」の資産額ではない
1,527万2,000円という平均金融資産額は、一般的な世帯が保有する金額として捉えるべきではありません。
金融資産を保有する世帯に限ると、中央値は728万円で、平均額の半分にも届きません。金融資産を保有していない世帯も含めた場合、中央値はさらに600万円まで低下します。
この差は、一部の大きな資産を保有する世帯が平均値を押し上げていることを示しています。
日本の多くの世帯で平均金融資産額を下回るー2024年の金融資産保有額別世帯構成
住宅購入という観点では、この違いは重要です。多額の金融資産を蓄積している世帯は、より多くの頭金を用意したり、住宅ローンの借入額を抑えたり、借入への依存度を低くして住宅を購入したりできる可能性があります。
一方、資産分布の中央値に近い世帯では、そのような選択肢は大幅に限られます。
また、金融資産はすべてがすぐに住宅購入へ充てられる現金というわけではありません。調査対象には、預貯金のほか、保険・有価証券なども含まれています。
金融資産の増加率が最も大きかったのは若年層でしたが、これは低い水準からの増加でもあります。
世帯主が30歳未満の世帯では、平均金融資産が2019年の194万8,000円から2024年には315万7,000円へと62.1%増加しました。
2019年から2024年にかけて、すべての年齢層で金融資産が増加ー世帯主の年齢階級別・一世帯当たり平均金融資産額(百万円)
それでも、この金額は世帯主が60代の世帯が保有する平均2,336万5,000円を大きく下回っています。
若年層の住宅購入は依然として借入への依存度が高い
住宅関連の負債は、主に住宅を購入する年代に集中しています。
世帯主が30代の世帯では、2024年の平均金融負債は1,000万6,000円で、そのうち935万1,000円が住宅・土地関連の負債でした。40代では、平均金融負債が1,086万3,000円、そのうち住宅・土地関連が1,008万2,000円でした。
両世代とも、金融負債の90%以上を住宅・土地関連の負債が占めています。
2019年から2024年にかけて、30代世帯の住宅・土地関連負債は21.1%、40代世帯では21.0%増加しました。世帯主が30歳未満の世帯では37.9%増加しています。
これは、若年層が経済的な困難に直面していることを直接示すものではありません。しかし、住宅価格が家計所得よりも速いペースで上昇するなか、若い世帯ほど住宅購入にあたって借入への依存度が高いことを示しています。
国土交通省の不動産価格指数によると、全国のマンション指数は2019年10月の149.9から2024年10月には205.5へと上昇し、約37%の伸びとなりました。
これに対し、ほぼ同じ5年間で平均年間収入は6.3%の増加にとどまりました
この比較は住宅の購入可能性を直接示す指標ではありませんが、住宅価格と家計所得がいかに異なるペースで推移してきたかを示しています。
既存の資産が購入者の差をさらに広げる
今回の調査では、所得統計だけでは捉えられない住宅購入力の源泉も明らかになっています。それが、すでに保有している住宅・土地資産です。
2024年の平均住宅・土地資産は2,103万5,000円でした。また、金融負債を差し引いた平均純資産額は3,156万5,000円となっています。
年齢による差も大きく、世帯主が30歳未満の世帯の平均純資産額は423万8,000円であるのに対し、60代では4,630万3,000円でした。
なお、これらの住宅・土地資産額は実際の売買価格ではなく、調査に基づく推計値です。総務省統計局は、建物について床面積、建築費、築年数、減価償却などをもとに推計し、住宅用地については土地面積や公示地価などを用いて推計しています。
こうした限界はあるものの、全体的な傾向は重要です。
蓄積した金融資産と住宅の含み資産を持つ既存の住宅所有者と、主に給与所得と住宅ローンに依存する初めての住宅購入者とでは、住宅市場における立場が大きく異なります。
このことは、所得の伸びが比較的緩やかである一方、住宅価格が上昇し続ける状況がなぜ成立し得るのかを説明する一つの要因でもあります。
今回の調査は、金融資産の増加が住宅価格の上昇を引き起こしたことを示すものではありません。しかし、一部の世帯が現在の所得以外にも住宅購入を支える資源を持っていることを示しています。
資産を多く保有する世帯にとっては、金融資産や既存住宅の資産価値が、住宅価格と所得の間に生じた購入可能性の差を埋める手段となる可能性があります。
一方、こうした資産を持たず、主に給与所得と借入に依存する世帯、特に初めて住宅を購入する人にとっては、住宅価格の上昇に伴い住宅取得のハードルは徐々に高くなっています。
調査方法とデータ上の留意点
調査における住宅・土地資産額は、実際の売買価格ではなく推計値です。
住宅資産は、床面積、建築費、建物構造、築年数、減価償却などの要素を用いて算出されています。住宅用地の価格については、土地面積や公的な地価データをもとに推計されています。
このため、実際の不動産取引価格をもとに算出される国土交通省の不動産価格指数とは、算出方法が異なります。
また、この家計調査は外国人世帯を対象に含んでいません。そのため、今回の結果は日本のすべての住宅市場参加者ではなく、日本の世帯を対象としたデータである点にも留意が必要です。
出典/Further Reading:
Patience Realty(2026年8月)



