消費者物価指数(CPI)の家賃項目が25年ぶりに上昇|東京23区の募集家賃は前年比6.2%増
- Tsubasa Yajima

- 2024年4月10日
- 読了時間: 4分
日本の消費者物価指数(CPI)における家賃が、2023年に25年ぶりの上昇を記録しました。長年ほとんど動きのなかった住宅コスト項目に、小さいながらも注目すべき変化が現れています。
総務省統計局がe-Statで公表したデータによると、2023年のCPIにおける家賃指数は前年比0.1%上昇しました。
上昇率自体はわずかです。しかし、日本の賃貸住宅市場にとって、その「方向性」には大きな意味があります。
これまで住宅家賃は、日本のインフレ指標の中でも特に安定した項目とされてきました。食品やエネルギー、建設資材などの価格が上昇する中でも、家賃は比較的緩やかな動きを続けてきました。
その状況が、変わり始めている可能性があります。

ここで重要なのは、「CPI家賃」と「募集家賃(新規募集賃料)」の違いです。
CPI家賃は、既存契約を含む幅広い賃貸住宅ストックを対象に算出されます。
一方、募集家賃は、新たに入居者を募集している物件の賃料を反映します。
そのため、市場では募集家賃が先に上昇し、CPI家賃は時間をかけて追随する傾向があります。
この両者のギャップこそが、今回のポイントです。
東京カンテイによると、2024年2月の首都圏における分譲マンション募集賃料は、前月比0.4%上昇し、1平方メートル当たり3,584円となりました。これで4カ月連続の上昇です。前年同月比では3.9%の上昇となりました。
特に上昇が目立ったのは東京都心部です。
東京23区の分譲マンション募集賃料は前月比0.2%上昇し、1平方メートル当たり4,274円となりました。こちらも4カ月連続の上昇です。
前年同月比では6.2%上昇しており、首都圏全体を上回る伸びとなりました。
海外の不動産投資家にとって重要なのは、日本全体で家賃インフレが進んでいるということではありません。
建築コスト、マンション価格、維持管理費、そして賃貸需要が同時に高まっている都市部の一部エリアで、賃料設定力(プライシングパワー)が強まり始めていることが重要なシグナルです。
特に東京都心部や賃貸需要の強いエリアでは、この傾向がより顕著です。
日本の賃貸市場は、海外市場と比べても賃料改定のスピードが遅いことで知られています。
既存入居者は一定の保護を受けており、賃料改定も自動的ではなく、貸主と借主の協議を経て行われるケースが一般的です。
そのため、市場で募集家賃が上昇しても、すべての契約へ直ちに反映されるわけではありません。
すでに居住している入居者は、新規募集物件で見られるような賃料上昇をすぐには経験しない場合もあります。
その結果、CPI家賃はわずかな上昇にとどまる一方で、東京都内の募集家賃はより大きく上昇しています。
それでも、この変化の方向性は重要です。
総務省統計局によると、2023年の「設備修繕・維持」関連のCPIは前年比6.5%上昇しました。
この項目には、住宅の修繕資材や関連サービスなどが含まれます。
貸主にとって、維持管理費や人件費、建設資材価格の上昇は、家賃を据え置き続けることを以前より難しくしています。
ただし、その影響は全国一律ではありません。
東京都心部や交通利便性の高いエリア、高所得層からの賃貸需要が強い地域では家賃上昇が見込まれる一方、人口減少や住宅ストックの老朽化、供給過多といった課題を抱える地方市場では、変動は限定的となる可能性があります。
2024年2月の東京カンテイのデータも、この地域差を示しています。
首都圏全体では募集家賃が上昇したものの、都県別・都市別では動きに違いが見られました。
東京都と神奈川県は上昇した一方、埼玉県は前月比で弱含みとなりました。
主要都市の中では、東京23区が依然として最も明確な家賃上昇エリアの一つとなっています。
日本経済全体にとっても、家賃の動向は重要です。
住宅コストは消費者物価指数を構成する重要な要素であり、家賃上昇が続けば、物価全体の押し上げ要因となる可能性があります。
これは、家賃が長年インフレを抑制する役割を果たしてきたデフレ時代からの変化を意味します。
不動産投資家にとって、実務上のポイントはより明確です。
日本の賃貸市場が海外の一部市場のような高インフレ環境へ急速に転換するわけではありません。
しかし、「住宅家賃はほとんど動かない」という従来の前提は、需要が強いエリアでは見直しが必要になりつつあります。
現在、その変化は新規募集物件や都市部の分譲マンション賃料に最も鮮明に表れています。
今後の焦点は、こうした上昇が契約更新時の賃料にも徐々に波及するかどうかです。
もしその流れが進めば、日本の住宅賃貸市場についても、住宅取得コストや建設費、維持管理費の上昇とは完全には切り離せない市場となってくる可能性もでてきます。
出典:
Patience Realty (2024年4月)



