なぜ今、企業は長野に本社を移すのか
- Tsubasa Yajima

- 6月21日
- 読了時間: 3分
更新日:7月4日
2024年、長野県への本社移転件数が過去最多を記録しました。背景には、BCP(事業継続計画)対策、従業員の健康・幸福、そして地域貢献への姿勢があると、2025年6月21日付の日本経済新聞は報じています。
パンデミック収束後、企業が再び東京に戻ると予想されていた中で、長野県はかつてないほど多くの本社移転を受け入れています。帝国データバンクのデータによると、2024年には県外からの本社移転が過去最多となりました。

長野県における本社移転の推移
物流の強靭化からライフスタイルの魅力、企業ブランディングに至るまで、戦略的かつ社会的な複合要因がこの動きを後押ししています。
歴史に根差した「デュアル拠点」戦略
1598年に飯田市で創業した綿半ホールディングスは、2024年に東京と飯田の2拠点体制へ移行しました。同社はこれまでも株主総会を飯田で開催しており、現在は15名の地元採用スタッフとともに顧客センターを運営しています。
グループの小売部門である綿半ホームエイドは、長野県および周辺県でスーパーマーケットを展開しています。2024年の物流制度改革に対応する形で、同社は飯田市に新たな配送拠点を開設し、中部圏のサプライチェーン強化を図っています。
2024年、本社移転が過去最多に
帝国データバンクの発表によれば、2024年に長野県へ本社を移転した企業は26社で、県外へ移転した企業は12社でした。
その結果、純増は14社となり、移転元の約半数は東京都からでした。
専門家によると、企業が長野に惹かれる主な理由は以下の3点です:
BCP(事業継続計画):リスク分散のための地域分散
ブランド価値:地方創生との親和性
ワークライフバランス:従業員満足度の向上
なお、長野県は過去44年間のうち39年間で、本社移転による純増を記録しています。
公的支援が後押し
長野県は2015年から企業移転支援を開始しており、特にコロナ禍以降はその取り組みを強化しています。

「Happy Nagano」支援事業資料のイメージ/リンクのPDFより抜粋
2021年には移転補助金の上限額を820万円から3億円に引き上げ、賃料や建設費など、オフィス・研究施設・研修所の新設に伴う各種経費を補助対象としました。

産業誘致補助金の資料イメージ/リンクのPDFより抜粋
長野県産業労働部によると、この支援強化は、高度人材の誘致と定着を目的としています。
誰が移転しているのか
長野市に本社を置くシナノウイングスは、木材再利用専門企業「やまもく舎」のグループ会社で、2022年に東京から本社を移転しました。移転後はイベント施設や研修施設の運営にも事業を拡大しています。
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補助金の採択は年2~4件程度に限られていますが、企業の関心は年々高まっています。レジリエンス、利便性、そして地域定着を重視する企業を中心に、大小さまざまな企業が長野への移転を検討しています。
地域発、全国へ広がる企業の価値観転換
長野県の人気は、日本企業の価値観の変化を映し出しています。リモートワーク、地域との関わり、持続可能な経営といったテーマが、企業のあり方と拠点の選び方に影響を与えているのです。
長野県にとっては、「場所・暮らし・継承」がますます重要な要素となっています。




