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2025年シントラ会議、各国の中央銀行総裁がインフレ目標と貿易リスクに焦点

  • 執筆者の写真: Tsubasa Yajima
    Tsubasa Yajima
  • 7月4日
  • 読了時間: 5分
欧州中央銀行(ECB)が主催する年次金融政策フォーラムがシントラで開催され、主要国の金融当局者たちが、インフレの見通し、金利の方向性、そして世界経済の分断リスクについて慎重な見解を示しました。

日本の植田和男総裁は、国内の物価動向に影響を与えている複雑な要因を説明し、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は利下げに慎重な姿勢を強調しました。

韓国銀行の李昌鏞総裁は、貿易依存経済が直面する非対称的なリスクに言及しました。 


すべての登壇者が、データ依存と地政学的不確実性について繰り返し取り上げました。 

日本銀行 植田和男総裁:「インフレ構造は依然として脆弱」


日本では、総合インフレ率と基調インフレ率の乖離が続いています:

  • 総合CPI:3年近く2%を上回って推移 

  • 基調的インフレ:いまだ「やや2%を下回る」と植田総裁 


植田総裁が挙げた3つの主なインフレ要因: 

  1. 賃金と物価の連動性:国内需要に支えられ、徐々に強まっている 

  2. 想定される関税の影響:まだデータには現れていないが、成長と物価を押し下げる可能性 

  3. 国内の食品価格ショック:総合インフレの約半分を占め、年末までに収束する見込み


金融政策の見通し: 

  • 現在の政策金利は中立金利を下回っている可能性が高い 

  • 利上げは、インフレの構成要素の強さに応じて判断 

  • 日銀はシナリオ分析を実施しているが、公表はしていない


世界的な分断と貿易: 

  • アメリカの関税と貿易の分断が中国を除くアジアにも影響を及ぼす懸念を示唆 

  • インドの成長など地域のレジリエンスが衝撃を緩和することに期待


基軸通貨の構造:

  • 米ドルの支配的地位は続くが、欧州や中国も通貨インフラを強化する可能性あり 


今後の展望: 

  • 2028年までに総合・基調インフレの両方を2%に収束させることが目標 

  • 後任者への助言:「バランスシートの縮小には細心の注意を」 

FRB パウエル議長:「堅調な進展、だが課題は残る」


パウエル議長は、米国経済は「かなり良好な状態にある」と述べました。 

  • インフレ率:総合2.3%、コア2.7% 

  • 失業率:4.2%で、労働市場は堅調 


利下げのタイミング: 
  • 関税によりインフレ見通しが上昇し、追加の利下げを見送る判断 

  • FOMCメンバーの多くは2025年後半の利下げを予想(データ次第) 

  • 「会合ごとの判断」方針を強調し、7月の利下げは確約せず 


中立金利と政策スタンス: 
  • 政策金利は現在、成長を損なうほどではないが引き締め的 

  • 中立金利は参考になるが、現実の指標を優先すべきと発言

     

シナリオ分析: 
  • FRBは1回の会合につき6〜7のシナリオを検討 

  • 公開に向けた検討は進行中(政策枠組み見直しの一環)


デジタル通貨と規制: 
  • ステーブルコインに対しては、連邦および州レベルでの明確な規制枠組みを支持 

  • 規制の欠如はリスク要因であると警告

韓国銀行 李昌鏞総裁:「関税は韓国にとってデフレ圧力」


李総裁は独自の見解を示し、「関税は韓国にとってインフレではなくデフレ要因になる」と述べました。 


  • インフレ:2%程度で安定 

  • 成長率:0.8%と潜在成長率を大きく下回る


関税がデフレ的な理由: 
  • 韓国は報復関税を行わない可能性が高い 

  • 輸入の22%を占める中国からの輸入価格が下落中 

  • 国内需要の弱さがインフレ圧力を抑制


金融政策: 
  • 昨年10月以降、政策金利を100ベーシスポイント引き下げて緩和継続中 

  • 首都圏の住宅価格上昇が金融安定のリスクに 

  • 今後の追加緩和はデータ次第で慎重に対応


貿易と世界の分断: 
  • 報復関税によりGDPが1%以上下落するリスクに言及 

  • 韓国の輸出依存体質を強調し、中国からの生産移転はすでに数年前から進行中 

  • 半導体などはグローバルAI需要の恩恵を受ける可能性に期待


通貨とドル流動性: 
  • グローバル危機時のFRBスワップラインに信頼感を示す一方、非グローバル危機への備えとして外貨準備の必要性も指摘


ステーブルコインについて: 
  • 銀行以外によるステーブルコイン発行は資本流出規制を損なう恐れ 

  • 商業銀行との連携によるトークン化預金の実証実験を実施中だが、広範な政策は他機関との協調が必要

イングランド銀行 ベイリー総裁:「金利は下降方向だがリスクに注意」


ベイリー総裁は「一時的」という言葉の使用を避けつつも、英国の最近のインフレ上昇は需要によるものではないと述べました。 

  • 規制・制度的な価格要因が主因 

  • 労働市場の軟化が進行中で、政策緩和は段階的になる見通し 

  • 「金利の方向性は下向きだが、過去の引き上げの影響が完全に現れるまで見極めが必要」と発言


貿易と金融環境: 
  • 関税の影響は依然として不透明で、供給網への影響が懸念 

  • 従来の金融環境指標が機能しにくく、より詳細な分析が必要 


シナリオ活用: 
  • 2025年5月に2つの公開シナリオを導入、内部でも有用と判断 

  • 条件付き予測の公表は誤解を招く可能性があると警告


ステーブルコインについて: 
  • 「すべてのデジタル通貨は信頼に耐えうるものでなければならない。そうでないなら通貨として扱うべきではない」と述べました

ECB ラガルド総裁:「荒れた水域を慎重に航行している」


ラガルド総裁は、ユーロ圏のインフレ率が2%の目標に達したとしつつも、「達成とは言えない」と述べました。 


ECBは今後も:
  • データに基づく運営 

  • 会合ごとの判断 

  • 金利見通しへの言及は控える方針


世界的ショックと分断: 
  • 地政学的・経済的分断はすでに始まっていると警告 

  • ウクライナ戦争やエネルギー供給の混乱を受けて、欧州はより自立すべきと強調


デジタル通貨: 
  • ステーブルコインに対し「通貨の民営化への一歩」として強い懸念を表明 

  • 「お金は公共財。私たちの使命はそれを守ること」と明言


シナリオ分析: 
  • 戦争、関税、パンデミックなどの外的ショックへの対応として、シナリオ分析の活用を強化する可能性を示唆 

  • ECBの基本予測の信頼性向上に資すると強調


AIと中央銀行業務: 
  • AIが経済的な物語を歪める懸念を示し、実証的かつ事実に基づく政策決定の重要性を訴えました 

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